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中野さん

(2009-05-18)
本が溜まって困る、といいつつも、結局家と研究室を往復していると、授業の準備や原稿書きなどで、どちらかの部屋に本をおいてきてしまって、困った!!ということが多々あり、結局2冊、3冊と同じ本を買うことになることがあります。

先日、原稿書きに『セックスの発明』を研究室に置いてきてしまったことを思い出し、出かけるついでにもう一冊買うことにしました。よく使う本だし…と思いつつ、事前にネットで調べたら、「歴史学」の棚にあることがわかったので、「OK、歴史学ね」と確認し、本屋に向かったのですが。

歴史学の棚にないのです…。困ったなと思いつつ、もう一度検索しようとしても、セルフで検索できる機械はなく、カウンターに検索用パソコンが置いてあるのみ。仕方ないと思って店員(お姉さん)に「本を探しているのですが」と聞くと、「タイトルはなんでしょうか?」

せめて手書きでメモしてくればよかったと思いながら、つとめて冷静に「セックスの発明です」といったら、「はっ!?」。そりゃそうですよねー。これってセクハラかしらと思いながら、この場合のセックスは、性別っていう意味なのよ、性別、と心で言い訳し、「セックスの発明です。(トマス・)ラカーの」と繰り返すと、「ああ、中野さんですね~」

ラカー→なかー→中野→中野さん
でしょうか? でも中野さんって、誰?
お姉さん、動揺させてすみません…。

結局は、わたしが後ろにも棚があることをきちんと確認していなかったのが悪く、後ろの歴史学の棚に本は無事にありました。よかったです。

追伸:先日わたしが森岡さんの「ロリコン論」を素晴らしいと書いたら、「ロリコン論を書くことが素晴らしいですか?」という問い合わせを貰ったのですが、わたしは別にロリコンについて書くことが素晴らしいと思っているわけではないのです。むしろロリコンとかレイプとか、いろいろ、他者を傷つける表現については、はっきりと規制すべきものがあると思っています。レイプゲームがまかり通っていちゃ、いけませんよね。また成人同士の「合意」もあまり信じていません。「主体」であることって、そんなにはっきりしたことじゃないと思っているからです。

でもその一方で、そのような欲望をもつことを批判だけしていても仕方がないとも思います。だってそういう欲望はそこに今あるのだもの。その欲望を他者を傷つけない形でどう折り合いをつえていくのか、欲望の主体が自分自身を反省的にみつめ、言語化する作業は、フーコーのいう「告白」とは違う次元で必要だと思うのです。少なくともわたしは森岡さんのロリコン論で、「ロリコンって、成人女性が怖いひとがなるんじゃないの?」といったような単純な問題ではなく、男性の男性身体への自己評価と密接に結びついている(可能性がある)のだということを知りました。そういう意味で、ものすごく面白かったし、認識利得がありました。

自分の欲望を垂れ流すことと、反省的に分析することは、同じにみえても、全然違うと思います。とくにそれが禁じられた欲望であればあるほど。ベイネケの「レイプ」論でも、レイプ犯が自分について語ることによって、レイプは性的欲望の問題(だけ)ではなく、挫折した男性性の表現なのだということが、はっきりとでていたと思います。

レイプ・男からの発言 (ちくま文庫)
ティモシー・ベイネケ
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感じない男

(2009-05-13)
さっき、森岡正博さんの『草食男子の恋愛学』を取り上げたのでもうひとつだけ。

基本的に面白くなかった本は感想を書かないので、感想を書きたくなるということだけでも面白い本であるという証明なんですが、個人的には、森岡さんの御本、

感じない男 (ちくま新書)
森岡 正博
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には、ものすご~~~く、感動しました。

よく学生にも薦めるのですけど、感動したところは、森岡さんの体験的「ロリコン」論です。
わたしには考えたこともない性的欲望の分析のされ方に、こういう風に自分自身を見つめて、文章を書くことができるって、どれだけ素敵なんだろう!!!と本当に感動しました。男性によるフェミニズムに優しい(?)フェミニズム本より、こういう素直な男性論には、目を啓かされる思いがします。

他のロリコンのひとに聞いてみたら、「自分の性的欲望のあり方とは違う」といっていましたが、それはそれでいいのです。そんなのはひとの数だけありますから。自分自身を深くそのまま見つめていく視線に、じーーんと来ました。


草食系男子の恋愛学

(2009-05-13)
森岡正博さんの『草食系男子の恋愛学』を読みました。

草食系男子の恋愛学
草食系男子の恋愛学
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森岡正博
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草食系、というのが流行しているので、卒論指導ほかで、一通りのことがいえないと困るかなぁと、草食系文献を集めているだけれど、この本は、実はそれほど草食系については関係ありません。どちらかといえば、「もてない」「冴えない」と自分で自分のことを思っている男の子にエールを送る、マニュアル本です。

いい本です。フェミニズムにも造詣が深い森岡さんが、フェミニスト的視点から、女性を「対等なパートナー」として尊重しつつ、関係を結んでいくにはどうすればいいのかを考えた本です。本当に、お薦めです。

でも一方で、男性とフェミニズムの関係、って難しいなぁと思ったのも事実。

というのは、最初に書店で手に取ったとき、「社会のなかの女性を考える」という部分が目に入ってきて、なんともいわく言い難い違和感を感じたからです(一貫して読んだら、それほどでもなかったんですが)。

社会には、女性に子どもを産んで欲しいという期待があって、結婚していない女性のなかにも、「自分の身体を使って出産をしてみたいという願望を持つ者はいる」。「多くの女性が、妊娠や出産を、自分の人生に訪れるであろう最大の転機として考えている」。しかし子どもをもつ女性の自己肯定が、「子どもを産まないあなたたちには、女の幸せはやってこないのよ」と高らかに宣言されているように聞こえることもある。仕事などで子どもを持たない女性のうちには、いくら気の強い女性であっても、「夜中に一人で泣き崩れてしまうくらいのしんどさ」に見舞われることもあるに違いない。子どもをもたない選択をした女性の中には「自分のいままでの人生は全部間違いだったのだろうか」という思いがこみあげてきて、本屋で出産を讃える本をみただけで、その場に座り込んでしまいそうになるひともいるそうだ。不妊治療を受けている女性は、「自分はもう女性として生きている価値がない、というところまで追いつめられることもある」。女性の身になって考えてみよう!!(このパラグラフ、森岡さんの本からの要約。「」で引用したところは、森岡さんが、ゴチックで強調しているところ)。

いや、その通りです。本当にその通りなんだけど、…なんでこんなに居心地が悪いと思うんでしょう? もうこれは森岡さんのせいではなくて、自分の「感受性」の問題なのだと思いますが。

まず、女性から、「夜中に一人で泣き崩れてしまうくらいのしんどさ」に見舞われるといわれれば、そうだねぇと共感し、「自分のいままでの人生は全部間違いだったのだろうか」という思いがこみあげてくる、といわれれば、そう。どんな人生を選択しても、その思いから完全に逃れられる女性はいないよね、と思いますが、そのエピソードが、「女性」の出産への思い、子どものない「女性」の人生の大変さ、淋しさ、へと一般化されて男性の口から語られると、

いや、待って。もちろん、出産を肯定的にとらえているひともいるけど、出産をしたくないという気持ちをを表に出せないっていう女性も多いし、どんな人生もしんどくて泣く日もあれば、これでよかったと晴れがましい気持ちになることもあるし、そんな一般化をされても、困るわ。それに女性の側にだって打算はあるのに、こんな風に接せられると、心苦しいというか、そういう心根を肯定できなくて、息苦しい気がかえってしない?

という気分になってきます。わたしが天の邪鬼なんでしょうか?
何よりも、男性の傍観者的なスタンス(マニュアルだからいいのかもしれませんが)が、とても気になりました。女性が傷つくときって、出産した女性の自己肯定からだったり、不妊女性が妊婦の姿に傷つく、それはそれで、そういう場面は多々ありましょう。ただ、森岡さんにお話をした人たちは優しいからいわなかったのかもしれませんが、わたしの周囲では(わたしの経験含め)、独身や子なしハラスメントをするひとって、圧倒的に男性で、男性が傷つけることのほうが、ずっと多いという意見を聞くのですけれど。それも悪意のある意地悪ではなく、時折こぼれおちる無意識の言動のほうが、問題あることが多かったりして。

「女のひとって大変だねぇ」「お話をよく聞いてあげなきゃ」ではなく、自分がそういうハラッサーになってはいけない、あなたもその構造を担っている社会の一員なのだから、そのことを意識ましょう。と、そこまで、一歩踏み込んであげて欲しかったです。要求しすぎなのは、わかっていますけれど。

恋愛マニュアルとしてはこれでいいかもしれませんが、女性の側(というものが一応あるとして)からみれば、この草食系男子はちょっと物足りないかな? 妊娠も出産も子育ても不妊も、まるで全部、女の問題であるかのようではないですか? 子どもをもたない男性は、「夜中に一人で泣き崩れてしまうくらいのしんどさ」に見舞われることはないんでしょうか? だとしたなぜ? 自分にとって、子どもとは何か、生殖能力を持たない男性にとって、不妊は何を意味するのか。傍観者ではなく、当事者として、自分自身の問題として考える経験を育まないと、「恋愛」は成就したとしても、「結婚」したときに、妻に愛想をつかせられかねません。

『草食系夫の家庭学』、第二弾としてぜひ読みたいです!!

(いろいろ書きましたが、全体としては本当に面白いです。とくに森岡さんが、素直に青春体験などを語られているあたりも秀逸)。



失速

(2009-05-03)
今日一日、本当に久しぶりに原稿だけに向かっていて、ここ数カ月、ブログの更新もできないほどバタバタしていたんだなぁと改めて思い、へこみました。気を取り直します。

マルチタスクで原稿を書いていてもあまり進まないような気がする。
それだけではなく、半年前に書いたきり放置していた原稿を書きなおそうと思ったら、結局、いろいろと手を入れて時間だけ食ったのだけれど、最初の原稿が一番いいのではないかと思いなおし(あまりに時間が経っていたので、手直ししても「自分と同じことを考えているひとがいるなぁ!!!」と思ったりして、間抜け)、手を入れれば入れるほど、もともとあった(殆どないけど)、原稿のリズムが狂って、悪くなっていくだけだということに思い至りました。

書評を書き始め半分で放置、
もうひとつの書評を少し進める、
あるチャプターの8割がた終了、
前の原稿の手直しを相当やって、たぶん総計で10行くらい進む、

が一日の進捗状況です。合間にネットで、メール他頼まれごとなど。
上記のうちのひとつは、本当に本当に申し訳ない気分で書いています。スミマセン。
でも珍しく進んだ。

疲れた所に依田沙江美さんの漫画を部屋の片隅から発掘して、しばし癒される。
それで、『真夜中を駆けぬける』シリーズの3巻、『美しく燃える森』はいつ出るのだろう(依田さんはコミックス化でいつも渋滞してしまううえに、そもそも掲載していた『シャレード』自体が廃刊になってしまったため、永遠に出ないような気がする)などということをぼ~っと考え続けて我に返る。

真夜中を駆けぬける (Charade books―勇気×昇シリーズ)

2004年の『Charade』11月号から、2006年の5月号まで隔月の奇数号に連載。ヤフオクでもないわね…。誰か捨てる人がいたら、下さい(ウソ、じゃなくて本気。買いたい)。ほんっとうに、読みたいんだけどなぁ。



プロフィール

千田有紀

Author:千田有紀
メールはsendayuki☆☆gmail.com(☆☆を@に変える)にお願いします。東京外国語大学のアカウントとソネットのアカウントは、すでに使用を中止しています(はじかれませんが読めません)。

引っ越しました
Tokyo日記より引っ越しました。よろしくお願いします。 管理人は、千田有紀です。学歴職歴などの経歴はこちらを。今までの著書、編著論文翻訳事典ほか時評ほか書評学会発表研究助成活動は、それぞれクリックしてください。カテゴリーの業績一覧をクリックしていただければ、もっと早いです。 前の日記で書いたBLスタディーズは、こちら。ほかの方にも取りあげて戴いたので、リンクをはっておきます。 業績などの一覧は大学のHPでも見れます。こちらのほうがきちんとまとまっております。
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今までの論文
今まで書いた論文の一部を紹介します
日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか
千田 有紀
勁草書房
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日本の近代家族について。ここ10年ほど書きためたものと、1990年代以降の変化を踏まえて日本の近代家族をどうとらえればいいのかの書き下ろし。
上野千鶴子に挑む
上野千鶴子に挑む
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勁草書房
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いちおう上野さんの退職記念論文集です。あまりない形式かもしれませんが…。
喪男の社会学入門 (アフタヌーンKC)
カラスヤ サトシ 千田 有紀
講談社 (2010-09-22)
アフタヌーンKCから出ていますが、いちおう対談本です。 もちろんカラスヤさんのマンガもふんだんに。
女性学/男性学 (ヒューマニティーズ)
千田 有紀
岩波書店
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ヒューマニティーズのシリーズのなかの1冊です。いちおう「高校生にもわかるように」書いたのですが、どうでしょうか? でもですます調で、わかりやすくを心がけています。
日本家族史論集〈1〉家族史の方法

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「『家』のメタ社会学:家族社会学における『日本近代』の構築」が掲載されています。日本家族史論集のシリーズの初巻です。 「家族社会学の現在」が掲載されています。
これからの家族関係学 (武蔵野大学通信教育学部テキストシリーズ)
土屋 葉
角川学芸出版
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「さまざまな『家族』のかたち」、「家族規範の成立と変容」。教科書です。
リブという“革命”―近代の闇をひらく (文学史を読みかえる)

インパクト出版会
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  『資料 日本ウーマン・リブ史』について書きました。これは珍しく、思っていることを存分に書けた気がします。   画像がでませんが、戦後核家族論について書きました。
脱アイデンティティ
脱アイデンティティ
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勁草書房
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ポジショナリティ論について書きました。いろいろあって、少し舌足らずかもしれません。今ならもう少し違ったように書けると思うのですが、そのときにしか書けないものもあるのかなとも思います。
構築主義とは何か
構築主義とは何か
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勁草書房
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構築主義の学説史・理論的整理。思いがけず、たくさんのひとに引用してもらって、嬉しかったです。
アメリカという記憶―ベトナム戦争、エイズ、記念碑的表象
マリタ スターケン
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エイズという表象についての章を訳しました。かなり興味深い論考で、アメリカに限らず、歴史と記憶、表象をめぐる政治について考えたい方にはお勧めです。
セクシュアリティ
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ジェフリー ウィークス
河出書房新社
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院生のときに訳したものですが、まだ古びてはいないと思います(かな?)。
戦後思想の名著50
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岩崎 稔 成田 龍一
平凡社
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川島武宜「日本社会の家族的構成」について。
“ポスト”フェミニズム (知の攻略 思想読本)

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ネオリベラリズムとフェミニズムについてまとまったものを書いたのはこれが初めてでした。 「戸田貞三『家族構成』」、「有賀喜左衛門『日本家族制度と小作制度』」、「中根千枝『家族の構造』」について。渋いところですけど、面白いですよ。
倫理 2008年度 (2008) (NHKラジオ NHK高校講座)

日本放送出版協会
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ラジオ講座のテクストです。とにかく綿密にチェックしていただいて、びっくりしました。かなりじっくり書きました。
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