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堺市のボーイズラブ本排除について

(2008-12-03)
堺市の図書館で、ボーイズラブ本の排除が問題になっているが、そのリストを見せてもらった(ウェブでも公開されています。よろしければチェックをどうぞ。でもものすごく重いです)。その感想。

***

個人的には、表現の自由は、ある一定の制限のなかで、守られる価値であると思っている。ある一定の制限のなかで、という譲歩をつけるのは、表現は無制限に守られるべきものではなく、ある表象が他者を傷つけないかぎりにおいて守られるべきだと思うからである。

つまりこのボーイズラブ排除が、性的マイノリティからのある種の表現にかんする抗議としてなされたのであるならば、無制限に表現の自由を主張することは、できないだろう。しかし、排除の理由が、「性的な表現が含まれるから」であるというのであれば、首を傾げざるを得ない。性的な表現は、図書館のなかに満ちており、それらは許容できるが、ボーイズラブだけが駄目であるとしたなら、問われるべきは、「同性愛表現を許容できない価値観」のほうだと思うからである。

この前提を踏まえたうえで、リストをみたときの感想は、やはり排除の基準がよくわからないというものであった。例えばリストには、鹿住槇さんや桜木知沙子さんの作品が多く含まれているが、これらの作家は、どちらかといえば、かなりソフトな古典的少女漫画タッチの作品を書くことで知られている。桜木さんの『金の鎖が支配する』という作品もしっかりリストに入っているが、これも性描写が出ていて桜木さんにしては珍しい挑戦だと思った記憶があるほどで、その他の作品は、家族の絆や愛情や信頼とは何かを問いなおし、ときに息苦しいほど「倫理」をみつめようとする、どちらかといえば「保守」といえなくもない作品群である。これらの作品も排除されるのかと知って、正直にいえば、驚きを禁じえなかった。

また鹿住槇さんは、昔の少女小説タッチのソフトな作品を量産される作家で、性表現の厳しいアメリカでも漫画化された作品が翻訳されている『ヤバイ気持ち』(英訳『Desire』)などは、相手への性的関心から先に関係を結んだ高校生が息苦しさを感じ、心の絆を結びなおすという、男女であったら性教育の教科書として使われてもおかしくないような作品である。その他の作品も総じてソフトで性表現も過激ではなく、鹿住さんの作品に男性同性愛が描かれている以外の排除される理由が見当たらない。

また割を食っていると感じられたのが、榎田尤利さんである。榎田さんは、ボーイズラブとファンタジーを描く作家でもあるのだが、どれもこれも駄目という状態である。『普通の男(ひと)』などは、自分のことを「普通」であると思っていた男が、同性を好きになるという「異常」な事態に驚き戸惑うという過程が丹念に描かれており、セクシュアリティの理論書のような趣がある本である。次作の『普通の恋』でふたりが結ばれ、『普通の男』にはほとんど性描写はなかった(ように記憶している)。これも駄目なのか。また、魚住くんシリーズも、排除されている。魚住くんシリーズは、傷つきやすい魚住くんが巻き起こす青春物語で、1巻ではまったく性描写は出てこない。なぜ1巻という限定をつけるかといえば、2巻以降は、あまりの高値に入手を諦めたからである。現在はすべて絶版であり、12月2日現在、某サイト(アマゾン)の中古品で、最終巻は最低でも3200円、最高額で5000円で取引されている。

ボーイズラブのように消費財的に読まれ、あっとうい間に消えてしまう作品こそを保存することこそが、図書館の使命ではないのか。桜木さんの作品など、ほとんどを読んでいると思っていたが、排除リストに入っているものには、知らないものもたくさんあった。絶版となり、ネットの中古市場からも消えてしまった作品は、図書館がなければ、実際にはまったくといって入手不可能となっているのが現実である。男性同士の恋愛を描いているという理由で、排除するにはあたらないのではないか。

また秋月こおさんの『フジミ』シリーズ、『要人警護』シリーズ、『ロマンセ』シリーズなどは、どれも排除の対象であった。権威主義的なことをいう気はないが、秋月さんは、別名で児童文学も書かれており、熊本市議も務められた方である。『フジミ』シリーズは、わずかながら性描写こそあるものの、基本は優れた音楽家を目指す二人の成長譚であり、栗本薫さんは「少女マンガ的構造」をもつ物語であると論じている。この評価は同意できるものであり、決して過激なポルノなどではない。またロマンセシリーズなどは、性描写も少なく控えめであり、平安時代を舞台としたスリリングな作品に仕上がっている。他にも、たけうちりうとさんの『薔薇とボディガード』シリーズやごとうしのぶさんの『タクミ君』シリーズなど、すぐれた長編が排除の対象になっているのは、いかにも惜しい。

製造業で働く男たちのロマンを中心にすえた、烏城あきらさんの『許可証をください』のシリーズも排除の対象であった。また人間味あるドラマを描くことで定評のある木原音瀬さんの作品も、絶版になった作品も多いにもかかわらず、排除の対象である。これらの作品に性描写がないとはいわないが、軽い味付け程度のものであり、この程度が排除の対象であるというのだったら、ボーイズラブ以外のほとんどの作品が排除の対象となるのではないかと思われる。

そもそも、ボーイズラブは作家買いが難しい珍しいジャンルである。というのは、どの出版社のどのノベルズから出るのかという、ノベルズに作品のテイストが大きく規定されるからである。堺市のリストを見ると、上位から、角川ルビー文庫、リーフノベルズ(倒産)、白泉社花丸文庫、講談社X文庫、Beboynovels、徳間書店キャラ文庫、小学館パレット文庫、集英社コバルト文庫と大手の出版社の性描写も大人しい作品ばかりであり、(個人的に)ポルノ的な作品が多いと思い浮かぶプリズム文庫などは、2冊(3冊?)にすぎない。つまりは購入の際に、購入図書がかなり吟味されたうえで、決定されていたことが伺える。

これらの作品を、ただ男性同士の関係が描かれているという理由で、図書館から排除するのは、いかにも行き過ぎであると思われる。




ふざけた注の1:フジミシリーズが排除されたのは、攻めの圭がオヤヂ臭かったからなんでしょうか。ワーグナーに問題ないとはいわないけどさw。
ふざけた注の2:リーフノベルズが多いけど、正しい日本語表現という意味では、リーフは酷かったですね…。
真面目な注の3:最近は購入のピークは過ぎていて、新しい作品があまりありません。
ふざけた注の4:烏城さんの許可証シリーズ、好きなのに。次の巻を早く読みたいです。
ちょっとふざけた注の5:小遣いも乏しい高校生などにとっては、図書館はありがたい存在だと思う。ものがものだけに、個人的に貸し借りする仲間を作らないかぎり、他では絶対に読めないから。これだけ性経験も低年齢化しているのに、リストにある程度のソフトな性描写のどこが問題なんでしょう。結局、ボーイズラブ、腐女子キモッってことなんでしょうか。
真面目な注の6:間違っているところなどあったらご指摘ください。
真面目な注の7:ピアス文庫も過激でした(20冊)。
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非公開コメント

No title

最近のBL本はまったく知らないのですが、保守派の人たちも、大して見ないで知らないで文句言っている感じ。
「ただフェミが関わっているから、とにかくバッシュしてやりたい!」という人も多い感じですね。

BL愛好者ってヘテロの人も多いのですが、ヘテロの性愛表現がちっとも魅力的じゃないって現状も困ったもんです。

えむさんへ

あれ? 一度コメントさせていただいたのに、消えてました。

BLって、読者はほとんどヘテロ女性だと思うんですが、むしろそれ以外のひとがどういう風に読むのか、っていうのは面白いような気がします。おっしゃるように、ヘテロの性愛表現が面白くない状況があり、で、BLが充実しても、ヘテロの性愛表現がどう変わるのか?って考えると、うむむという気になります。

バックラッシュは、本当にどこまでも…ですね。
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