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トイレの神様

(2011-01-02)
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて年末は紅白を見て、「ほー、こんな歌手がいるのかー」っと感動しながら観てました。
本当に所謂歌謡曲って、聞いてないんだなぁ…。
(いちおう「学生」身分のときは、それなりに聞いてたんだけど)。

しかし男子アイドルの曲の変わらなさというか、昭和テイストって何なのかしらね?
格好いい男の子による自己承認の歌って、メロディーも歌詞の内容も、ずっと変わってない気がするのは、気のせいなのかしら?
懐かしい。

それはさておき。
「恐らく、厳しいだろうなぁ」と思っていてあえて避けていた「トイレの神様」を初めて聞きました。
(ファンのひとがいたら、以降ごめんなさい。読まなくていいですよ)。

トイレの神様(DVD付)

濱口國雄の「便所掃除」という詩をやはり思いだしました。

便所掃除

       濱口國雄  

 扉をあけます
 頭のしんまでくさくなります
 まともに見ることが出来ません
 神経までしびれる悲しいよごしかたです
 澄んだ夜明けの空気もくさくします
 掃除がいっぺんにいやになります
 むかつくようなババ糞がかけてあります

 どうして落着いてしてくれないのでしょう
 けつの穴でも曲がっているのでしょう
 それともよっぽどあわてたのでしょう
 おこったところで美しくなりません
 美しくするのが僕らの務めです
 美しい世の中も こんな処から出発するのでしょう

 くちびるを噛みしめ 戸のさんに足をかけます
 静かに水を流します
 ババ糞におそるおそる箒をあてます
 ポトン ポトン 便壺に落ちます
 ガス弾が 鼻の頭で破裂したほど 苦しい空気が発散します 
 落とすたびに糞がはね上がって弱ります

 かわいた糞はなかなかとれません
 たわしに砂をつけます
 手を突き入れて磨きます
 汚水が顔にかかります
 くちびるにもつきます
 そんな事にかまっていられません
 ゴリゴリ美しくするのが目的です
 その手でエロ文 ぬりつけた糞も落とします
 大きな性器も落とします

 朝風が壺から顔をなぜ上げます
 心も糞になれて来ます
 水を流します
 心に しみた臭みを流すほど 流します
 雑巾でふきます
 キンカクシのうらまで丁寧にふきます
 社会悪をふきとる思いで力いっぱいふきます

 もう一度水をかけます
 雑巾で仕上げをいたします
 クレゾール液をまきます
 白い乳液から新鮮な一瞬が流れます
 静かな うれしい気持ちですわってみます
 朝の光が便器に反射します
 クレゾール液が 糞壺の中から七色の光で照らします

 便所を美しくする娘は
 美しい子供をうむ といった母を思い出します
 僕は男です
 美しい妻に会えるかも知れません

駅員さんによる労働の詩なんですが、この詩に初めて出会った小学生のとき、強烈な印象を受けました。
それは労働の過酷さと尊さの両面を謳いあげているだけではなく(こういうところには素直に感動する小学生だったので)、最後のパラグラフのところです。

 便所を美しくする娘は
 美しい子供をうむ といった母を思い出します
 僕は男です
 美しい妻に会えるかも知れません

「美しい」で統一されてるけど、一生懸命労働した報酬は、将来の「美しい妻」なんかい!
じゃあ、結婚相手が「美しくない妻」だったら、がっかりして、報われなかったことになるんだろうか。
それってあんまりじゃないの?
と思ったからです。

まぁ捻くれてるていえば、捻くれてますけどね。小学生の自分。
これが例えば「心根の美しい妻」とかなら、欺瞞的だけど、全然OKだったわけですよ。
詩としては面白くないですけどね。

また「便所を美しくする娘は、丈夫な子供をうむ」ならまだましです。
子どもにまで「美しさ」を求められても。
子どもが産まれるのがどれだけ大変なことか知らない立場のひとの呑気ないい分なように聞こえてしまいます。

しかも「娘」ってなぁ…。
何だかなぁ。幾つぐらいを想定しているか知りませんが、30代後半の出産が20代前半の出産数を軽く凌いでいる時代ですから、子どもを産むのは「娘さん」ばかりじゃないんですよね。

しかも母がいうにはっていうこの調子、何だかこういうことをいう男性と結婚したら、嫁姑問題で苦労しそう(って大きなお世話もいいところ)。

また労働の過酷さに、なんというか、「本来女の仕事」である便所掃除を、「男の僕」がやらされているからこそのなにものかが付加されているような気がして、いっそう何というか。

この詩のだいご味は最終パラグラフでありながら、最後の部分が、心のセンサーにひっくりまくりだったのです。
(左翼の男性とわかりあえないと思う瞬間ってこういうときかも)。

 便所を美しくする女は
 珠のような子供をうむ といわれることを思い出します
 僕は男です
 光り輝く妻に会えるかも知れません

母が消えたし、詩としてはパンチがなくなるけど、政治的にはまだbetterになった気がしますが、どうでしょうか?
政治的に正しくなると、本来もっていた「ひとに訴えかける力」がなくなることが問題かも。
その部分がなくなったら、この詩の良さがなくなってしまう、ということは、「女をめぐる常識」を不問に付すことなく再生産して、「労働」について謳っているんだなぁって思うのです…。
(それがどーしたといわれれば、それまでですが)。

「気立てのよいお嫁さんになるのが夢だった私」が、「おばあちゃん」に「毎日きれいにしたら、女神さまみたいにべっぴんさんになれる」といわれて、せっせと掃除をしているトイレの神様。
なんだかこの詩に呼応しているように思えます。
この二人が結婚したら、何だかいいカップルだと思いますが、如何でしょうか(と辛酸なめ子風にいってみる。けど「トイレの神様」の娘さんは「便所掃除」の僕は趣味じゃないので選ばないような気がします)。

死んだおばあちゃんがこういってた、
恩返しもできなかった、
語られる家族の情があまりにストレートなので、泣きにくいです。
植村花菜の堂々とした歌いっぷりが素晴らしく、かえって「確信犯なのかなぁ」と思わされ。

捻くれてますねぇ。
ファンのひと、ごめんなさい。

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非公開コメント

私は、ただ単純に、トイレの歌なんて下品だとか、ただの思出話だとか言う人が意外と多くて残念です。
逆に、歌を単純にしか受け取れない、思考力があまりないのかな?と思ってしまいます。
この歌は、そんなことが言いたいのではなく、目には見えない何かを積み重ね、人の心に何かを残す、人間の見えない心をもっと大事にしようと言ってるんじゃないんですかね?
それこそ、普段何も考えない人には響かないかもしれませんよね。

はじめまして

この詩、考えさせられます。
私も最初にこの曲聴いた時はちょっと泣けたのですが、
流行って否応なく何度も耳に入るようになってくると…??
ちょっとな~と何度も聴く曲じゃないんじゃ?と感動出来なくなってしまったひねくれものです(^^;)
元々洋楽ファンで、楽曲の良さや迫力重視派なせいかもしれません。
この曲が悪いと言っているのではないです。

感動している方を否定するつもりは毛頭ないです。
でも素直に受け取れない派も結構多いようなので、人それぞれでいいんじゃないかと思います。
トイレ~に感動して、他の曲にピンと来ない方が、友人から「これ(他の曲)に感動しないなんて感性がおかしい」と言われたら多分ムッとするでしょう。
うちの母は「悪くないけど、わざわざ曲にするようなこと?」と言ってました。
小学生とか、すごく若い子にも受けてるのは、そういう考え方が新鮮だったのかもしれませんね。

この歌を聴いて親とは違う愛情で育ててくれた祖父母を思い出して感動しました。
色々な例えを通して教育をしてくれる年配の方の知恵と愛情。大人になってからわかるそんな愛情の感謝の歌だとストレートに聴こえました。
まさかそんな風に捉える方もいるとは。
ある意味勉強になりました。

ありがとうございます

「トイレの~」の歌は、家族や親族のいないひとや、家族や親族から理不尽に虐待されたり捨てられたり殺されたりしてる子どもやひとにとっては、非常に苦しいものです・・・。世の中の多くというか、ほとんどひとにわかってもらえないことですけれど。

微妙に違うというか、かなり違う現実問題も含まれるのですが、あえて同じ問題系の例を挙げてみると、

よく、クリスマスに街を歩いたり、クリスマスソングを聴くのが辛い、ていうひといますよね。それならわかるというひと、いますよね。それだったら、理解してくれるひとはいるというか。

ざっくばらんにいうと、それと同じようなもんで、クリスマスよりお正月が、恋愛の歌より、こういった家族・親族ものの曲が恐怖のひと、世の中にはいるんです。

おっしゃって下さって、ありがとうございました。

もちろん、上記はわたしの感想で、千田さんの記事は、あまりにデジャブの古典的・典型的な社会主義とフェミニズムのディス・コミュニケーションというか、右翼~左翼まで非常に多くの「男」たちにおける無垢な/確信犯の性差別について指摘してること、よくわかっていますけれど・・・。

うれしかったです。

はじめまして

はじめまして、お初にコメント申し上げます。
あけましておめでとうございます(いまさらですが)

一点だけ異議を唱えさせてください。

詩的言語においては「美しい」という語には、もう少し
多義的な解釈を許して良いのではないでしょうか。

「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と表現した人もいましたね。
濱口じしん、便所というもっとも
不衛生な場所について「美しい」という語をもちいているわけですし。


うろ覚えですが、たしか「ファウスト」に

  人間には鋭敏な聴覚があるから

  美しい言葉が美しい行動を

  よびおこすのだ

というような一節があったと記憶しています。

濱口の詩の場合、「美しい」という語は、「魅力的な外見」
という意味には必ずしも還元できないのでは
無いでしょうか。


No title

詩人に同情的に読むと、この詩で言う「美しい」は、
「 朝の光が便器に反射します
 クレゾール液が 糞壺の中から七色の光で照らします」
というイメージです。

そして、美しい子を産むのは、便所掃除をすることの延長上の能動的行為。美しい妻に会うのも、便所掃除をする男の美観の延長上でのもの。出会うのは、世間一般で言う美人妻イメージではないはず。

しかし、千田さんにはそう受け取れなかった程、世に女(あるいは妻)と美しさの間での固定的なメージ結合があるのでしょう。

その結合を揺らがせなかったのは、確かにこの詩の問題かもしれません。

ひとみさんへ

>トイレの歌なんて下品だとか、ただの思出話だとか言う人が意外と多くて

そうなんですか。確かにこの歌をそういう風に受け取ってしまって終わりにするのは残念ですね。それ以上のことをいっていると思います。

りほさんへ

若い人には新鮮だったのかもしれませんね。それにおばあちゃんにっていうところがまたミソかも。

どうしておばあちゃんなのかとか、ドラマを読み取ることも可能ですし。そういうところにも親との関係とか、陰影があるようには思います。

感動しろ~っと押し売りされるといやなんですけど…。

Oさん

おっしゃる通りだと思います。

家族の問題に関しては、学生さんの授業後のコメントなんかをみていても、自分が喋った些細なところに引っかかって、「救い」を見出されることもあったりして…。本当に家族のなかのドラマは、外からは見えない、隠されていると思います。

ありがとうございました。

スノーボール同志さん

>、「美しい」という語は、「魅力的な外見」
という意味には必ずしも還元できないのでは

確かに言葉は多義的ですし、ずらすことも可能だし、おっしゃる可能性もあると思います。

でもなおさら、そうであるなら「娘」と「美しい」を結んだ上で、子どもに「美しい」をかぶせてほしくなかったなぁとも思います。美しい娘、美しい妻、といった紋切り型が出てきた瞬間、言葉はしんでしまうと思います。

まことさんへ

先ほどのお返事とかぶりますが、おっしゃる通りで、「美しい」という言葉と「妻」「娘」の結合の陳腐さが、「美しい」という言葉のもつ可能性を殺してしまったのではないかと思います。

詩だからこそ、なおさらかな…。基本的には素敵な詩だとは思うのですが、だからこそ残念というか。
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